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「漫画 君たちはどう生きるか」羽賀翔一が西加奈子原作の映画『まく子』を語る

2月23日(土)、東京都内の池袋コミュニティカレッジ9F(西武池袋本店別館)にてセブンシネマ倶楽部新作映画紹介トークが開かれ、直木賞作家・西加奈子さんの傑作「まく子」を映画化した鶴岡慧子監督と、漫画家で「漫画 君たちはどう生きるか」の羽賀翔一さんがゲストに迎えられました。

<目次>

「まく子」「漫画 君たちはどう生きるか」紹介

「まく子」

西加奈子/2016年・福音館書店

小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいる。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしく、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきた。コズエはとても変で、とてもきれいで、なんだって「撒く」ことが大好きで、そして、彼女には秘密があった…。

<読書ログ会員の感想>

・第二次性徴期というのは物事の視点や尺度が変わる、それこそ宇宙人でも見るような(?) ファンタジーなのかもしれません。(mottiさん)
・この話には、思春期との葛藤や、変化への怯え、自分と違うものへの恐怖が描かれています。読むたびに思う事が全く変わる本なんだろうなーと思いました。サラバでも思った事なんですが、西加奈子さんは、激しい文章を書きますねー。激しくて、生々しくて、心を真っ直ぐ打つ様な強さがを感じます。他の作品も読んでみたいです。(文子。さん)

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「漫画 君たちはどう生きるか」

原作:吉野源三郎 漫画:羽賀翔一/2017年・マガジンハウス

知的好奇心旺盛な少年「コペル君」と、彼を亡き父親の代わりに見守る教養ある「おじさん」。そんなふたりの心温まるやりとりを通じて、生きる意味を平易に、深く説いた児童向け教養小説の古典が初めてマンガ化。

<読書ログ会員の感想>

・想像力をもって多角的視点でモノを見て、視座の転換(主体と客体の転換)を図り、人と人との無限の繋がりが社会を成り立たせている事に気付いていく少年から青年への覚醒の書だと分かった。コペルニクスの天動説と地動説の関係は自己視点と無限にある他者視点のことの暗喩なのだな。(aka1965さん)
・子供にとって一番大きな問題であろうイジメや、家庭環境の違う子と出会った時、この本を思い出してくれたらいいな、と思います。(アスランさん)
・数々の偉人のエピソードを散りばめ、歴史の変遷を紐解くことで、永久に変わることのない人間として生きることの真理を教えてくれる一冊ではないでしょうか。漫画なのでとても分かりやすく、是非原書も読んでみたいですね。(ヨティ男さん)

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映画『まく子』

2019年3月15日(金) テアトル新宿ほか全国ロードショー

出演:山﨑 光、新音、須藤理彩/草彅 剛
原作:「まく子」西加奈子(福音館書店 刊)
監督・脚本:鶴岡慧子

群馬県の四万温泉で撮影され、田舎に育つ少年・サトシが様々な人との関わりや、謎の美少女・コズエとの出会いなどを経て子供から大人へと成長していく思春期の繊細な姿を描いた物語。





それでは、鶴岡監督と羽賀さんのトークをたっぷりとご紹介します。

鶴岡慧子監督 羽賀翔一

左:鶴岡慧子監督
右:漫画家・羽賀翔一さん

羽賀翔一、ドラマ作りに共感!

―― まず、本作を観た感想を教えてください。

羽賀翔一さん
ネタバレをしない程度に、それが難しいんですけど(笑)。
すごくハッとすのものと、ホッとするものが同居していました。寓話的な部分もありつつ、自分たちが子供の時に感じていた気持ちとか風景が混ざっているので、リアリティを失いかけないギリギリのところで作られていることに共感しました。
怪獣が登場するようなファンタジーではなく、日常と地続きというか些細な心の動きを描きながらも、それが違う世界や違う生き物に繋がっていくようで、キャラクターがイキイキとしていました。
加えて起きていることが大事件ではない中で、どうドラマを作っていくかは、僕もそういう漫画を描いてきているので共感できました。

―― 西加奈子さんの原作の印象は?

鶴岡慧子監督
コズエがすごく面白かったです。複雑だし、多面性があるし、掘り下げ甲斐のあるヒロインだなと感じました。

羽賀翔一さん
小説だと読者が各々コズエのイメージを持っていると思うけど、映像にするとちょっとでも違和感とか、コズエ感がなくなってしまうと成立しなくなってしまう。そういう意味では完璧なコズエを撮られていると思います。
どうやってこの役者さんを見つけたんだろうって考えちゃいました(笑)。

―― 小説の言葉を映像にするって漫画も同じですよね。

羽賀翔一さん
そうですね。(「漫画 君たちはどう生きるか」の)コペル君は、原作に挿絵みたいなものはありますけど、はっきりとしたビジュアルとしてはなかったです。
しかも時代考証的にいうと、当時1930年代の小説なんですけど、みんな坊主頭じゃないといけないんですよね。だから坊主頭でコペル君を描いていたんだけど、キャラクターのリベラルな感じというか、生き生きとした姿が出ないなと思って。間違っているんだけど、自分の作りたいキャラクター像に寄せて。そういう嘘をつくところはいいバランスを保ちながら作っていました。

―― コペル君とおじさんがとても面白い人間関係ですよね。映画の中でも子供と大人の関係、親子だったり、近所のおばさんだったりとの関係性が非常に面白いですよね。

鶴岡慧子監督
西さんの原作がサトシという少年が色々な人物から色んなものを受け取るちょっとした旅を経て成長する物語です。そこは映画でも描きたかったですし、なおかつ一人一人のキャラクターがすごく愛おしくて魅力的なのでそこは大事にしました。

自分がハッとした経験を漫画に

―― 漫画も世の中にいない人を作っていく作業ですよね。

羽賀翔一さん
完全に想像では作っていなくて、自分の経験とか身の回りにいる人とかそこをミックスさせて作っている部分が多いなって。「君たちはどう生きるか」も原作から変えたシーンがいくつかあります。
例えば、浦川君というお家が貧しいキャラクターの子が家が貧しいということを小説では1ページとかの文章で説明しているんですけど、漫画は一コマとか二コマとか一瞬でそのことを読者に理解させなきゃいけない。浦川君のバックボーンを考えていた時に、僕自身中学生の時にノートを詰めて板書している友達がいて聞いてみたら「そんなに何冊もノート買えないから」って。その時すごくハッとして、そのハッとした経験を漫画に使うと読者もきっとハッとしてくれるはずだ、と。
だから全く自分が見てもいない、感じてもいないことを描こうとすると情報の密度が弱くなるので、情報量をとにかく増やす。一ページの中で表現できる情報量を増やしていくことが、人を描くときには大事なのかな。

―― 羽賀さんの作品はシンプルだけど鮮やかで、独特なリズムで展開していきます。情報量を詰めてというより、削ぎ落しているような。

羽賀翔一さん
削ぎ落すことが情報量を増やすことだと思います。10考えていることをそのまま10描くのではなくて、どうやったら1とか2で伝えられるかなと。

鶴岡慧子監督
わたしも常に意識しているのは、アルノー・デプルシャン監督(仏)が語っていた「1分間の中に4つアイディアを入れろ」という言葉で、それはやるべきだなと。

草彅剛のバランス感覚を絶賛!

―― キャストのお話も聞いていきたいと思いますが、サトシ役の山﨑光君はいかがでしたか?

鶴岡慧子監督
素朴でいい意味でキラキラしすぎていなくて、田舎の温泉街にいてもおかしくない子だったので、キャスティングしました。

羽賀翔一さん
素朴さもありながら、内に怒っている。そこで根暗さはないんですけど、沸々と怒っているなって感じがあって。その矛先がうまく定まらない感じとかがリアルだなと見ていました。
いわゆる子供じゃなくて、子供と大人の両面を行き来する感じがピッタリ。この話ってある種、子どもから大人への境界線をまたぐ、そのまたぐ瞬間を描いていると思うんですけど、その葛藤というか。でも明確に子供と大人には向こう対立があるわけではなく、両方が渡り合っている感じがあるし。それが作品全体に統一されているテーマだろうと。
草彅さんが演じていたお父さんも丸っきりダメ親父じゃなくて、いいお父さんの部分と混ざり合っている所をどう表現するのか。Theダメ親父じゃないリアリティというか、両面を行き来しているバランスが特に草彅さんは絶妙でした。

鶴岡慧子監督
原作を読んで父ちゃんが全然悪い人じゃない。すごく情けないし、カッコ悪いし、サトシからみたら最悪な父親なんですけど、愛おしさを感じるし、お父さんとのすごくいいシーンがいっぱいあってそれは映画にも入れたかった。
子供たちが多い作品の中で一本スッと柱が立つような役者さんにお願いしたいと思っていた時に草彅さんが候補にあがりました。“当たって砕けろ!”精神でお願いしたところOKをいただき、そこから企画もグッと動きだしました。
撮影ではカメラの前での存在感からくる説得力と、いい意味で力が抜けている部分が融合していいシーンが撮れました。

羽賀翔一、映画に嫉妬!?

―― 編集についても伺いたいのですが、監督はご自身で?

鶴岡慧子監督
今回は編集技師の普嶋信一さんにお願いしました。大ベテランの素晴らしい編集技師さんで、“映画とはこうだ!”という編集をしてくださいました。普嶋さんの編集をみると、映画って編集だなと思います。

―― 漫画も編集って大切ですよね。

羽賀翔一さん
そうですね、見開きで人がどう読むかとか、めくるという行為が既に時間経過なんです。そこですっ飛ばせるものもあるし、省略できるものもある。だから必ず10ないし20ページで収めないといけないけど、どうやって要らないものを捨てていくか。僕の場合、一回描いただかでは絶対完成しなくて、編集者にみてもらって直してを繰り返していくことでこういうものかってわかる。
逆に(鶴岡監督の)お話を聞いていて羨ましいなと思ったのが、“これって一体なんなんだろう”ということを漫画は入れづらいんです。映画って一度映画館に入り席に座れば、最後まで観るしかないですよね。でも漫画はいくらでも途中で読むのを止められるし、最後まで読まなくてもいいし。映画みたいなメディアだと“これってなんなんだろう”ってものを忍ばせやすいですよね。その自由度はいいなって思いました。

―― 余白とかが有効に使われていて、羽賀さんの作風ってやっぱり独特ですよね。

羽賀翔一さん
ご覧の通りめちゃくちゃ絵がうまいとかではないので、読み易さとか少ない言葉でいかに波紋を、小石なんだけどすごい波紋が広がるみたいなものを作りたくて。そこが生命線だと思っているので、絵が挿絵にならないように、絵と言葉がお互いに連動し合っているようなものを作りたいと思っています。

―― 聞くところによると今もアシスタントをなさっていると。

羽賀翔一さん
はい、宇宙兄弟のアシスタントを今も担当しています。

鶴岡慧子監督
びっくりですよね。

羽賀翔一さん
背景を描いています。小山宙哉先生がすごくて、編集技術というかコマ割りにしても学ぶことが多くて。
漫画家って締切に追われていると段々と漫画を描くことが辛くなってきちゃって、好きでやっていたはずなのに、どんどんモチベーションが落ちてしまうことがあって。僕もそういう時期があったんですけど、小山先生を見ていると楽しく漫画を描くための工夫をすごく沢山している人で、漫画の技術的なことはもちろん、向き合い方がすごくいいなと。

―― そもそもお二人が映画監督、漫画家を志したきっかけをぜひこの機会に。

鶴岡慧子監督
大学時代の卒業制作でつくった『くじらのまち』がPFFアワード2012でグランプリを受賞して、実はそこで日活の方がご覧になっていて『まく子』(配給:日活)にも繋がっているんです。
『くじらのまち』をつくっていたのが2011年だったということも大いに影響していて、就活をしている時に震災があってすごく混乱してしまって。“こんなの作っていたらダメだ”みたいな気持ちにもなって、それでもとりあえず卒制だけは完成させようと。4か月くらいかけてなんとかつくりあげて、教授の方から「完成したのならPFFには出しておいた方がいいよ」って仰っていただき、ですね。

―― 映画に魅せられたきっかけは?

鶴岡慧子監督
元々は大作系が好きな子供で、恐竜が大好きで『ジュラシックパーク』とかも大好きで、観ているうちになんとなく映画だったらなんでもできるかも、みたいな思い込みをしたのが始まりですね。撮っている作品とは全然違いますよね(笑)。

―― 羽賀さんは?

羽賀翔一さん
これを表現したいとか、世の中に伝えたいとかがなくて、じゃあ自分は何も伝えられない人間なのかって思うと、そうじゃないんじゃないかって葛藤もあり。伝えられるものがあるかどうかの検証、実験として作っているのかなと。
作り方もはっきりとしたテーマがあるというよりは、ある種コミュニケーションというか、その中で浮き彫りになってくるものがあって。
自分で自分のことって意外と分かっていなくて、自分を知る手段が僕の場合は漫画を描くことなのかなと。自分の中にこういう感情があったんだとか、こういう記憶があったなみたいなものが、作っていくなかで発見できる。
まず先に何かがあるのはなく、描く中で見つけていけたらいいのかなと思っています。

―― それぞれ少年の主人公を描いているので、お二人の子供だった頃のお話も教えてください!

鶴岡慧子監督
人と同じが嫌な子でちょっとひねくれていました。すごくあまのじゃくで、誰かと被ることを嫌がっていて。あと男の子に間違われるのがすごく嬉しかったです。昔から髪の毛も短くて、ある意味で越境していたんです(笑)。

羽賀翔一さん
先日取材で「子供の頃に描いていたものを持ってきてください」と言われて、実家を探していたら詩がでてきて、“生きる”っていうタイトルで。
“生きる意味は、生きている間は分からない。死んだ時に、自分が生きていた意味を知ってもらうために、今生きている”
みたいなことが書いてあって、なんか嫌な小学生だなって(笑)。書いた記憶はなかったですけど、そういうことを考えるのは好きで。
僕ずっと背が小さくて、整列もいつも一番前だったんですけど、漫画で絵を描いたりするとみんなの輪ができるのが嬉しくて。コミュニケーションの手段として、描いていた子供時代だったなと思います。





映画『まく子』は3月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー!

2018年一番読まれた本『漫画 君たちはどう生きるか』は、212万部を突破してまだまだ絶賛発売中!

直木賞作家・西加奈子の傑作「まく子」は、2月12日よりついに単行本が発売中!


まく子 (福音館文庫)単行本

映画『まく子』予告

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