Pocket

2018年2月に100万部を突破し、5月に 「小学生が選ぶ!”こどもの本”総選挙」で堂々1位となった『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)の監修を務めた今泉忠明先生。先生は、お父さん、お兄さん、そして息子さんも動物学者という一家で、動物に関する数多くの著作をもち、猫の専門家としても名高い哺乳動物学者です。そんな今泉先生が監修された最新刊、『 猫がいればそれだけで まるごと1冊、猫のこと』が、三笠書房から6/22(金)に発売。表紙・挿絵には、「旅するレストラン」と称して、各地で料理を提供する大人気の料理人、トラネコボンボン 中西なちおさんのかわいいイラストが、200点超掲載。猫のことを学べるのはもちろん、見るだけでも楽しめる、「1冊まるごと猫100%」の贅沢な猫本ができました!今回はその発売を記念して、今泉先生に猫についての楽しいお話を語っていただきました。

こどもの本総選挙1位『ざんねんないきもの事典』

―― 今泉先生の監修された『ざんねんないきもの事典』が「こどもの本総選挙」で堂々の1位を獲得されましたね、おめでとうございます。

今泉:そうなんです、授賞式に行きましたよ。でも、あくまで関わった者の代表として、ですけれどね。厳密には僕が書いたわけではないので。

―― これまでも動物に関する図鑑や事典はたくさんあったと思いますが、「ざんねん」という切り口で解説した内容が新鮮でした。子どもだけでなく大人も夢中のようです。

今泉:そうですね、テーマ設定がおもしろかったんだと思います。これまではスポットライトを当てるように「この動物はすごいんだぜ」「ここが素晴らしい!」と「優れた部分」を称賛するものが多かった。このシリーズは逆で、いわば動物の「落ちこぼれた部分」を取り上げたっていうのが良かったんでしょうね。


―― 『ざんねんないきもの事典』のまえがきもそうですが、先生の監修なさっている本の解説原稿を拝見すると、短い文章の中に、動物へのやさしさや、愛情が溢れている感じが伝わってきます。

今泉:いや、僕は研究者だから、研究対象に対して愛はあまり持たないようにしてるんですよ。「かわいい」とか「愛」が勝ると研究できなくなってしまうんです。ほら、科学博物館では、最後は標本にするでしょう? 一番いい状態じゃないと永久標本にならない。それはある意味、残酷な作業でもある。学生時代からそういう姿勢を叩き込まれているから、愛情だけでは研究者は務まらないと思っていますね。

――科学的に動物と向き合うためには、ある種の冷静さが必要なんですね。

人間と猫は脳が似ている?

――今回は『猫がいればそれだけで まるごと1冊、猫のこと』という文庫本を監修なさいました。 これも、猫好きにはたまらない内容ですね。
この中に、人間と猫は脳の構造がとても似ているという話がありました。

今泉:ああ、猫は大脳皮質が発達しているという話だね。もう一つ、人間とよく似てるのは、子育てのところかな。野良猫の場合、食事は人間が与えるわけではないので、基本的に自分で見つけないといけない。そこで、親が子どもに狩りの仕方を教えるんです。狩りができないと、子どもは死んでしまうからね。実は、そういうことをやる動物って少ないんですよ。 猫を研究するとすごく面白いですよ。狩りをする動物っていうのは、全般的に頭がいいんだよね。

――子猫を生んだばかりの親猫は、大事に子猫を育てますよね。でも、その子猫がだんだん大きくなってくると、子離れするかのように、急に仔猫を怒ったりして。

今泉:そう、子猫に咬みついたりするよね。十分に成長したら、おっぱいも食べ物もあげない。子供はそれでお腹が空いてフラフラになるのを経験して、それで親元を巣立っていくんです。家猫にすら、その習慣は残ってます。最初はめいっぱい大事にして可愛がって、独り立ちする時は子供が自分で気づくまで放っておく。いい意味での放任主義ですね。 そのかわりに子供の頃は、それはそれは大事にしますよ。絶対に叱らないし、褒めて褒めて何度も教える。人間も本来はそうあるべきなんですよ。勉強もそう。自分で気づかないと勉強しないね。僕がそうだったから(笑)。

犬と猫は祖先が同じ?

――よく、「ペットを飼うなら犬派?猫派?」なんてことを言いますけど、本書では、犬と猫の祖先は同じだったとありますね? 

今泉:その通りです。犬も猫も「ミアキス」という動物が祖先です。森で進化してきたのが猫。森から追い出されて、平原で進化したのが犬です。平原で単独で獲物を追いかけてたんじゃ、体力も使うし効率も悪いので、仲間と協力して狩りをするようになって、集団生活をするようになった。これが犬の進化の過程です。

猫に友達はいらないって本当?

――犬好き派からすると猫は薄情だとか、冷たい、なんて言われることもあります。「猫に友達はいらない」というのは本当でしょうか?

今泉:先ほど言ったように、猫は森で生活していたでしょ? 森の中で狩りをするには、物陰に隠れて、草や葉音をたてないように静かに獲物に近づかないといけない。そうすると、群れで行動するより、単独で動くほうが都合がいいわけです。他の猫の気配や物音で、獲物が逃げちゃったりすると生きていけないからね。猫はそうやってひとりで生きてきた動物なんです。だから猫にとって寂しい、っていう感情はないんですよ。人間が勝手に、寂しそうとか、冷たそうに「見えている」だけ。当の猫は、ひとりで過ごして、「あー、快適」って思ってるんですよ。

――とは言え、飼い主が家に帰ると玄関で出迎えてくれたり、中には飼い主の言葉がわかったりする猫ちゃんの動画なんかもありますよね。

今泉:猫にとっての家の中っていうのはね、ある種の縄張りなんですよ。飼い主が帰ってくると、「なんだよー。せっかく快適だったのに変なのが帰ってきたなー」って近づいて、においをチェックしているんです。それを人間が勘違いして「迎えに来てくれた―!」って言って喜んでる、ってのが実態ですね。

――先生。そんなバッサリ…。

今泉:ははは(笑)。身も蓋もないこと言っちゃったかな(笑)。

ペットロスになるのは男と女とどっちがなりやすい?

――飼い主にはたとえそれが思い込みでも、大事な「家族」であることに変わりはないですよね。この本では、ペットロス症候群になりやすいのは男女どちらか?というお話もありますね。

今泉:どちらかと言えば、女性のほうがペットロスになりやすい、ということなんだけど。ただ、感情移入し過ぎると良くないことだけは確かです。専門用語で「同一視」っていうんですけど、猫を自分と同じ(人間)、あるいは「分身」のように思っちゃうんだよね。 例えば、「猫が慰めてくれる」とか「言葉がわかる」とか「しゃべった」とかね。猫ってほら、ふわふわして可愛いから、ついそう思いたくなるんだろうけれど、それは猫の行動の表面的なことだけを見ているということ。猫はそんなこと、絶対にないですよ。 だって猫は大昔からひとりで生きてきたんだから。他がいなくなったほうが猫は楽なんですよ。生存競争ってそういうもんです。 「顔を舐めて慰めてくれた」というのは、猫にしてみればただ様子をうかがってるだけ。それを勝手に人間がそう思うのはいいんだけど、そうじゃないんだ、っていうのも心のどこかにとどめておかないと。

――なるほど。ということは、人間はいつも猫にちょっぴり片想いしてるってことですか……。

今泉:残念ながら、そういうことだね(笑)。心はいつもすれ違ってるってわけだ(笑)。

――なんだか人間の「ざんねん」な話になってしまいましたね(笑)。

「猫ブーム」に思うこと

――ところで、最近の調査で、猫の飼育頭数が犬のそれを逆転したということで、空前の「猫ブーム」のようにいわれていますが、一方で「かわいい」だけが先行してしまい、お金を出して簡単に飼い始めたはいいけれど、育てきれず捨ててしまうというケースも増えているとか。こうした猫ブームについて、先生はどう思われますか? 

今泉:ブームのいいところは、その動物に対して社会の知識レベルが上がることでしょう。 一方で、捨てる、あるいは動物に逃げられる、という負の出来事も起きている。なぜそんなことが起きるかっていうと、人間側が猫のことを正しく理解せずに、自分と「同一視」してしまっているから。 これだけ自分は愛情をかけて育ててるんだから逃げるわけがない、と思ってしまう。でも、猫には猫の習性・生き方がありますから、ちょっとドアを開ければ隙間からスルッと出てってしまう。 人間と動物は違うんだっていうこと、どんなにかわいがっても過剰に期待してはいけないということを、このブームの裏で伝えたいな、と私は思います。そして、たとえ世の中の1%でも、人々がそのことに気づけば、不幸な猫の数はかなり違ってくると思います。

――ブームが起きることで、問題点もクローズアップされる、ということですね。 では最後に、この本をこれから読まれる方にメッセージをお願いします。 

今泉:まさにこのタイトル通りなんですが、猫がいる、それだけでいい、ということです。人間のためになるとか、もうちょっと賢くなってほしいとか、期待をしてはいけない。猫が何かをしてくれるとかじゃなく、猫がいるだけでじゅうぶんということでいいじゃないですか。猫はその存在だけで価値があるんですよ。 それから、人間はもっと冷静にならなきゃいけないよね、猫のように。可愛いだけじゃなく、猫の性格とか、態度とかも観察して、自分自身の生き方を考えるきっかけにしてもらえればいいなと思っています。


――今日は楽しいお話の数々、本当にありがとうございました。これからも、先生が監修される新刊が続々と出るご予定とのこと、楽しみにしています。


◆プロフィール◆
今泉忠明(いまいずみ・ただあき)
哺乳動物学者。日本動物科学研究所所長。「ねこの博物館」館長。1944年東京生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、国立科学博物館で哺乳類の分類学、生態学を学ぶ。上野動物園での動物解説員を経て、現在は奥多摩の自然を調査している。主な著書・監修書に『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)、『猫はふしぎ』(イースト・プレス)など多数。
トラネコボンボン 中西なちお(なかにしなちお)
料理人兼作画家。「旅するレストラン」と称して、各地で料理を提供するかたわら、独特の世界観を持つ絵本やグッズなどを幅広く展開。シュールで愛らしい猫のイラストにはファンが多く、著者に『猫ごよみ365日』(誠文堂新光社)など多数。公式サイト:http://toranekobonbon.com/


『猫がいればそれだけで まるごと1冊猫のこと』


三笠書房より2018年6月22日(金)発売
◆猫に学べば、人はもっと幸せになる!

「猫の思考と行動」「身体能力」「歴史」「有名人との逸話」「童話」「病気と終末ケア」など、9つのテーマで猫の魅力に迫る。すべてのにゃんLoversに捧げる、究極の猫読本。

◆今、大人気の作画家、トラネコボンボン 中西なちおによる

悶絶級にかわいい書き下ろしイラストが、200点超掲載! 見ても楽しめる贅沢な1冊!

読書ログに『猫がいればそれだけで まるごと1冊、猫のこと』の評価・感想を登録しよう!

『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』

笑えて、ちょっとためになる!生き物たちのおどろきの真実。思わずつっこみたくなるいきもの122種。

読書ログ会員の評価・感想

平均評価:3.2点

感想

・息子が小学校に入学。入学祝いに図書カードを貰ったので先日「好きな本を買っていいよ」と本屋に放してみたところ選んできたのがこの一冊。何度も立ち読みしてたが遂に買えてニコニコ読んでおります。(ybook さん)

・母が店頭で見つけて買ってきたので読んでみました( ´∀` )これは……面白いですね!!!!!!声を出して笑いました!!!!!!!!!!!!!(minase86 さん)

・多分に子供に受ける表現や内容を意識したためか、文章自体がちょっとふざけた印象の、それこそ「ざんねん」な表現になってしまっているところも多々ありますが。気軽に手に取ってもらい、動物や生物学に興味を持ってもらうきっかけとしては、良い本なのかもしれません。(kengo さん)

・「それ知ってる!」というものもあれば、「いますぐ誰かに言いたい!」と思うものもある。挿絵も可愛らしいです。(rieko さん)

読書ログに『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』の評価・感想を登録しよう!

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ページ上部へ戻る