絵本で育む豊かな心

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絵本で育む豊かな心

~剣淵町絵本の館からの便り~

10月の課題図書は、世代を超えて愛されている絵本「ぼくを探しに」です。

今回は、絵本を使ったまちづくりを続けている北海道上川郡剣淵町から、「剣淵町絵本の館」の高橋愛佳さんにお話を伺いました。多くの地方都市が人口減少を抱える日本において、剣淵町も例外ではなく、絵本の里づくりが立ち上がった1990年前後と比較すると3割程度人口が減少。しかしながら、剣淵町で暮らす人々、剣淵町を訪れる人々にとって人生における豊かさをプラスしている何かがあり、そのシンボルが「剣淵町絵本の館」なのかもしれません。

絵本の里けんぶち

約30年前に、剣淵町を有名にしたい、という強い思いをもったまちの青年たちが、「何でまちおこしをするか」のヒントを得るため、隣市在住の銅版画家さんや東京の出版社の編集長さんに講演をお願いしたところ、「文化でまちづくり」そして「絵本を使ったまちづくり」を、とアドバイスをいただきました。そこから、「けんぶち絵本の里を創ろう会」が結成され、地道かつ大胆な活動が実を結び、今では「絵本の里けんぶち」を多くの方に知っていただけるようになりました。

人口は3,200人ほど、保育所から高等学校まで各1校ずつの小さな町ですが、子どもが少ないので大人がみんなを見守り、絵本の館も利用しやすいようで、放課後の子ども達がよくやって来ます。小さな頃から「絵本の館」に親しんだ世代が現在大人になり、その子どもたちが利用者の中心になり、進学や就職で町を離れた方も、帰省する度に寄ってくれるので、私達も「剣淵にいて良かったな」と思います。

他市町村から引っ越されてきた方に、「剣淵だと伸び伸び子どもを育てられる」という声を聞いたこともあります。

「心を豊かにする」絵本は、毎日の生活で、ちょっと疲れてしまった大人たちにも「何か」を与えてくれると思っています。読んでいて思わず泣いてしまったり、今までの自分を振り返って考えたり、誰かのことを思いだしたり…。たった1冊の、数分間のおはなしが、人の心に強い印象を残すこともあります。絵本を作っているのは大人ですので、それが子ども向けのものでも、同時に子どもの頃に何かを置き忘れた大人へのメッセージかも知れないな、と作者や編集者さんのことを考えることがあります。

『ぼくを探しに』が日本で発行されてから今年でちょうど40年。親から子、そして孫へ受け継がれている名作の一つです。絵本の多くは「32ページ」という体裁らしいのですが、こちらは100ページを超す大長編です。単純な線画で描かれた絵ですが、読者を物語の世界に引き込む力がとても強く、内容の受け取り方や読後の感情もさまざま。足りないかけらを探しに出て、見つけて、でもやはり違って、またもとの足りない自分になって探しに行く。それが誰かにとっては、一日の中で起こった出来事に近かったり、ほかの誰かにとって、歩んできた人生を振り返るきっかけになったり、悩みごとの答えを出すヒントとなったりするのではないでしょうか。子どもにとっては、果てしない冒険物語なのかもしれません。

「剣淵町絵本の館」は、「絵本の里づくり」のシンボル的存在として開館しております。蔵書規模は絵本約40,000冊を含んだ約72,000冊と多くはありませんが、皆様のご来館をお待ちしております。

~剣淵町絵本の館 高橋愛佳さんより~

 


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