芥川賞作家・朝吹真理子氏が感じる芸術的世界

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芥川賞作家・朝吹真理子氏が感じる芸術的世界

芸術家評から創作秘話まで

朝吹真理子氏(写真提供:山種美術館)

今回は山種美術館主催の「【企画展】上村松園―美人画の精華― 関連トークイベント」2017年9月9日(土)開催にて、2011年芥川賞受賞作家の朝吹真理子氏の生の声を聞いてきましたので、そのレポートをお届けします。

朝吹氏は小説を創作することについて、

『小説というより、文字と紙を使って言葉のアルバムを一枚書いているイメージ』だといいます。

例えば『音楽アルバムは一曲聞いても全曲通してでも聞ける。アルバム自体を部屋に飾っておくこともできる。そんな風に、小説のどこか1ページをめくりそこに書いてあるところだけを読んでもいい』と、その創作の過程について語ってくれました。

~芸術作品と独特の感性~

講演の中では、朝吹氏が好きだという芸術家とその作品の感想をたくさん挙げて頂きましたが、それはまるで朝吹氏の小説の一部を聞いているかのような、独特な感性に溶け込んでいくかのような時間でもありました。

武満徹(1930-1996年)…日本を代表する現代作曲家

【コメント】武満氏のエッセイ集より「夏の庭にワーッと霜柱が立っていた。陽光がさしていてきれいだった。気が付いたら夢であった。」というフレーズがなんとも言えず好き。

滝口修三(1903-1979年)…近代日本を代表する美術評論家、詩人、画家

【コメント】デカルコマニー(転写画)が好きで高校時代の頃からやっていた。

本(流跡)の表紙にはデカルコマニーの裏面のシミを使った。何かから何かへと染み出てくるものが好き。(上村松園「牡丹雪」(山種美術館蔵)にもふれ)余白が美しい。余白のために書かれている。書かれていないものが浮かんでくる。書かれているものは書かれていないものの影だと思う。

上村松園 《牡丹雪》 1944(昭和19)年 絹本・彩色 山種美術館
第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少で受賞したデビュー作

 

俵屋宗達(江戸時代初期)…江戸時代初期の画家

【コメント】(「舞楽図」について)屏風から音楽が流れてきそうだ。(「蓮池水禽図」について)蓮の花が咲いている4日間の大気が一枚の絵すべてに入り込んでいる様だ。この絵の感覚を一滴でいいから小説に書けたらいい。

鏑木清方(1878-1972)…近代日本画の巨匠

【コメント】「朝涼」にはエノコログサが描かれている。(猫は描かれていないが)たぶんここで猫が遊んでいたのでは、と思った。裾は朝露で濡れているのかもしれない。

小林古径(1883-1957)…日本画家

【コメント】女性が二人で風呂に入る「出湯」には、あいまいに描かれてた水を見ていると、湯気の粒子がすべて入り込んでいるように見える。

上村松園(1875-1949)

【コメント】性的なまなざしを排除して、一人の女性が眠いなと思って蚊帳を吊っている時にふと蛍を見た。日常の瞬間を切り出していてきれいだと思った。

「猪瀬光」氏、「志賀恵理子」氏の作品のほか、池田輝方(1883-1921年)《夕立》(山種美術館、(上村松園―美人画の精華―展で展示中。)にみる雨の表現についてなど、美術作品に朝吹氏が感じることについてお話くださった。


池田輝方《夕立》 1916(大正5)年 絹本・彩色 山種美術館


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