人間「土方歳三」の生きた証を現代に伝える 土方歳三資料館・館長インタビュー

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1月の課題図書『燃えよ剣』はいかがでしたか?今回は主人公である土方歳三の子孫として、東京都日野市にある『土方歳三資料館』を運営されている館長・土方愛さんにお話を伺いました。

『燃えよ剣』と土方歳三

これまでの歴史を振返ってみると、新選組にとって良くない時代が長く続いたと思います。それこそ新選組は人斬り集団と呼ばれていましたし、昭和中期までは新選組は小説・映画などの作品中では決まって悪役でした。
そういう意味でも司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』の影響は絶大です。歳三の人柄を前面に押し出した作品で、これまでとは全く異なる視点で捉えています。『燃えよ剣』を含め『新選組血風録』、『竜馬がゆく』が司馬さんの幕末三部作と言われ、1962年(昭和37年)から順次発表されていて、まさにその時の司馬さんは幕末一色だったのではないでしょうか。竜馬と歳三で相対的な幕末をみることができます。土佐の出身で外へ外へと活躍の場を求めた坂本竜馬。一方で、内陸に育ち消えゆく徳川幕府とともに幕府を守り、武士道を全うすることに命を懸けた新選組。主人公として局長の近藤勇ではなく副長である歳三が選ばれたのは、歳三が箱館五稜郭で最後まで戦い抜いたことで、幕末という一時代の締めくくりを重ね合わせるにふさわしかったからではないでしょうか。そう考えると、司馬さんは歳三の一生を描くだけではなく、それを通して歴史を伝えて下さったのではないかと思います。司馬さんは当家や周辺を丁寧に取材され、史実を数多く散りばめられています。人伝えではありますが、司馬さんが歳三のことを好きだったということを伺っております。その後、沢山の小説や映画、ドラマで新選組隊士の生き様を丁寧に描いて下さるようになりました。

近年では、ヒーローや若いイケメン集団のような印象もある新選組ですが、実際には荒れていて、狭い中で暮らし、男臭く、喧嘩も多く殺気立っていたのではないでしょうか。出身や言葉や生活習慣が違う、言うなれば文化的素養や背景が違う浪士をまとめるには鬼(の副長)になるしかありませんね。そういう背景にして、命をかけさせる「局中法度」が誕生したのでしょう。

一、士道に背くまじきこと。
一、局を脱することを許さず。
一、勝手に金策すべからず。
一、勝手に訴訟(外部の)取り扱うべからず。
一、私の闘争をゆるさず。
いすれも罰則は切腹。
(『燃えよ剣』上巻「局中法度書」より)

歳三が武士になって名を揚げんとの願いを込めて自らが手植えした矢竹

敵を殺した数より、新選組隊内で粛清した人数の方が多いですし、殺伐としていたんだろうなと推測します。だからこそ、近藤や井上という故郷武州多摩の仲間には信頼をおけたのかなと思います。皆がいなくなった北関東の戦いや会津戦争以降、全く違った新選組になっています。
去年はちょうど新選組の150回忌にあたり、日野にある高幡不動尊金剛寺に子孫が集まりました。近藤勇、沖田総司、井上源三郎、斎藤一、島田魁、中島登など錚々たるメンバーの子孫が集まり、一般の方も400名を超える方が訪れました。色々な方と接する中で、亡くなった隊士だけではなく、生き残った隊士も大変な人生を過ごされたのではないかと想像しました。明治を生きた方の人生、これもスポットこそ当たっていませんが大切な歴史の一部ではないでしょうか。

土方歳三資料館設立の経緯

当資料館は平成6年5月11日、歳三の命日に開設しました。
実は、何十年も前の祖父母の時代からこの場所で史料は公開していたんです。その後、『燃えよ剣』で幕末ブームが起きた時もそうですが、全国から歳三の生家を見たいと訪れて頂いて、アルバムに整理していた遺品の写真を見せてあげたりしていたことが今の資料館の原点になります。一方で、私たちにも日常の生活がありますので、いつ・何名訪れるかわからないお客様に対して、常に応対するのには限界がありました。そこで、観光協会の方や作家さんなど有志の皆様さんからのご要望も含めて、月に一度の公開にして、そのタイミングに合わせて史料公開をすることでお客様にご迷惑が掛からないようにすることが出来ました。平成2年までは実際に歳三が暮した生家が残っていたのですが、新しい家屋に建て替えを行って小さな展示スペースを設け、このような形での展示に至っています。

館長の土方愛(ひじかた めぐみ)さん

平成6年から24年までは私の母が館長を務め、私はサポート役でしたが、途中から徐々に関わりを深めてまいりました。最初は、熱心なファンのための遺品公開といった形で、10~20人/回の方々にご来館いただき、最後はみんなでお茶を飲んで終わるという、非常にアットホームな運営形態でした。歴史ブームで来館者も徐々に増え、モノレールからは1度/月住宅街に(資料館に並ぶ)人の行列が見えるようになりました。そうなると、益々沢山の方にお越し頂くようになりました。嬉しい反面、応援して下さっている近隣の方々のご迷惑にもなると思いまして、開館日を2回/月としました。そもそも、私が幼少の頃は「土方」を「ひじかた」と読める方が少なかったのですが、さすがにここまで浸透すると、時代の変化を感じます。
来館する皆さんは相当詳しい方が多いのですが、「知らないと恥ずかしい」みたいな、敷居が高い形にはしたくありません。ゲームで興味を持った、本を読んでかっこいいと思った、など入口は人それぞれで良いと思うのです。歴史の捉え方は人それぞれです。その前提で考えれば歴史はどんな立場からでも紐解いていけることが大切だと思っています。

歳三ファンの熱意に支えられて

歳三が幼少の頃風呂上がりに相撲の稽古をしたという当時の生家の大黒柱が梁に使われている資料館入口

遺品を維持していくことは簡単なことではなく、様々な理由で博物館等へ寄贈するようなケースも多いと伺います。遺品によっては価値の有無でバラバラに保管されて、例えば池田屋事件の際に歳三が使用した鎖帷子のような有名な遺品だけがクローズアップされてしまうようなこともあると思います。生家である当家に揃っていることが、歳三の生きた証を伝えていくために最適なのではないかと思っています。この場所で誇張せず、淡々と史実を伝えていくのが大切かなと思っています。
こうして運営をしていると「自殺を思い止まりました」「受験勉強に身が入らなかったけど、歳三のことを知り、資料館へ来て、勉強を頑張りたいと思いました」「歳三のファンだけど、農家に嫁いで地方に住んでいるので一度も来れなくて。でもやっとこれました!一生に一度です」など、沢山のお言葉を頂きます。色々な方の想いが詰まりに詰まっていて、出来ることならば大切にしていきたいと考えています。
最近では、海外からの来館者も多いです。ロシア、北欧、アメリカなど出身は様々で、きっかけも、ゲームや全世界配信の大河ドラマなど色々です。先日は、フランスから新婚カップルがハネムーンでわざわざお越し頂いて、銅像の横で嬉しそうに写真を撮影している姿が印象的でした。
良い時も悪い時もあり、今があります。決してヒーローではなかったと思いますが、代々伝えてきて、子孫としては誇りに思ってきました。その想いは、今の私も大切にしないといけないと思っています。今年が150年ですから、なるべく良い状態で保存して、あと50年後の200年まで伝えていければ良いなと思っています。


~編集部より~

日本のみならず海外からも人気を誇る新選組、そして土方歳三。子孫であっても土方さんは決して自慢をすることはありません。先祖代々、色々な時代を乗り越えてきたからこそ、「冷静に大切に史実を伝えていきたい」という誠実な館長の想いをたっぷりと感じました。土方さん、素敵なお話の数々ありがとうございました!

 

燃えよ剣

読書ログ1月の課題図書を電子書籍でチェック!
BookLive!

著者:司馬遼太郎
カテゴリ:歴史・時代 / 歴史・時代小説
出版社:文藝春秋

作品内容:新選組副長、土方歳三を描いた司馬遼太郎の代表作が、ついに電子書籍で登場。無類の面白さが貴方を待ち受ける。これぞ小説だ!不世出の小説家、司馬遼太郎さんには幕末に材を求めた作品がいくつもあります。そのなかで『竜馬がゆく』とともに特別な支持を集めてきたのがこの『燃えよ剣』。武州から出てきた土くさい田舎剣士、土方歳三。天然理心流四代目の剣豪、近藤勇と出会ったとき、歳三の人生、そして幕末史は回転し始める。近藤局長、土方副長の体制で本格始動した京都守護職配下の新選組。沖田総司、永倉新八、斎藤一ら凄腕の剣客が京都の街を震撼させる。池田屋事件などを経て、新選組とともに歳三の名もあがっていくが――。激動する時代のさなかで剣のみを信じ、史上類例を見ない強力な軍事組織をつくりあげた男の生涯を、練達の筆で熱く描きます。

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評価・感想

4.6 点

・久々に歴史小説読みました。司馬遼太郎はやっぱり面白い!(by MT1985さん)
・司馬作品の中でも最も読みやすい作品。土方歳三が、とにかくかっこいい。それでいて歴史的な流れもわかります。(by boze777さん)
・人生最高のバイブルです。レビューなんておこがましい。(by lokiさん)

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歳三の生家「土方歳三資料館」

東京都日野市にある「土方歳三資料館」には、歳三の愛刀である和泉守兼定(市指定有形文化財、年に一度の限定公開)、直筆書簡をはじめ、歳三が京に上る直前に編んだ句集の豊玉発句集、歳三が池田屋事件で使用した鎖帷子、八月十八日の政変時に使用した鉢金、歳三の人となりを詠んだ榎本武揚書額、歳三も行商をした土方家家伝薬である石田散薬に関する史料、土方家伝来十文字槍(銘:助宗)、歳三が稽古に用いた天然理心流木刀、歳三京時代使用の鎖帷子、歳三生家の復元模型等約七十点余りが公開されています。
(入館料)大人:¥500、小・中学生:¥300
(アクセス)(開館日)など詳しい情報は公式HPをご確認ください。
http://www.hijikata-toshizo.jp/

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